アクティブな登録生産者数は数百以上。明治時代から続く老舗の輸出戦略とは|栄光堂商事

2025年3月28日(金)

アクティブな登録生産者数は数百以上。明治時代から続く老舗の輸出戦略とは|栄光堂商事

1877年、岐阜県・大垣市で「鈴木栄光堂」として創業した栄光堂ホールディングス。自社で製造した商品の輸出歴は長く、1939年にはイチゴゼリーをハワイに輸出。近年は他社商品の輸出を含めた海外事業を強化しており、GFPでも多くの生産者とマッチングを成立させています。同グループの海外事業を担当する栄光堂商事の統括本部長である安藤貞敏さんに、生産者とのマッチングで重視する点、輸出先の情報収集など、事業拡大の秘訣についてお話を伺いました。

インタビューさせていただいた方

安藤貞敏

栄光堂商事株式会社

統括本部長
安藤貞敏さん

岐阜県大垣市出身。大学卒業後、楽器メーカーに勤務し、長年にわたって音響機器の海外営業・マーケティングに従事。欧州、中国での約20年にわたる駐在経験を生かして、菓子食品輸出と愛する地元を盛り上げたいと2023年Uターンして栄光堂商事に入社。趣味はクラシック音楽鑑賞、ゴルフ。

栄光堂商事株式会社 について

業種
商社
品目
コメ・コメ加工品・菓子・飲料・調味料・酒類・麺製品・その他 (農林水産物・食品に限る)

GFPを日本全国の生産者との出会いの場として活用

Q.GFPに登録されたきっかけを教えてください。

安藤貞敏さん

当社は自社企画・自社製造の商品から他社で製造された商品まで、幅広く輸出している商社です。そのため、海外の事業者および国内生産者をつなぐチャネルは元々持っていました。しかし、輸出事業の拡大を見据える上では、もっと効率的にパートナー企業を見つけられる仕組みづくりが必要でした。そのような課題を抱える中で、農林水産省がGFPという新たなプラットフォームを立ち上げたと知り、早々に登録しました。

Q.輸出事業に注力されているのはなぜでしょうか。

安藤貞敏さん

そもそも当社は1877年に製菓業から始まった会社です。輸出業としては、1939年にヒット商品であるイチゴゼリーをすでにハワイに輸出していました。当時はまだお菓子の輸出は未開拓の事業。昔から、革新的な領域にチャレンジすることを恐れない企業風土でした。ブランド名はゼリーのお菓子から、「Zelico」(ゼリコ)と命名。以降、長らく自社製品はZelicoブランドで海外向けに販売を行ってきました。

そして、2010年には歴史を重ねて蓄えられた輸出のノウハウを活用し、他社の商品も取り扱う菓子輸出事業に力を入れていこうと海外事業部を発足。自社のお菓子を食べてもらいたいという想いから、日本のお菓子を海外の人に食べてもらいたいという想いへと、より広い方向に舵を切ったんです。前述のように当社が菓子メーカーとして製造する商品をすべて「Zelico」というブランドにまとめ、自社以外のNB商品も含めて「日本の“食文化匠”を世界にお届けする」というスローガンのもと、20カ国以上に食品の輸出を行っています。実のところ、我々だけの力では紹介しきれないほどこの日本には魅力的な商品が溢れているというのも理由の一つです。

ゼリコOffice
スタッフの増加に伴い、2022年に設立した新社屋「ゼリコオフィス」。栄光堂グループの海外事業を担う。「Zelico」というブランド名は、1935年に製造開始されたヒット商品「ゼリコ飴」に由来する。

Q.GFPはどのように活用されていますか?

安藤貞敏さん

商談会、相談会、展示会などのイベントを通じて、主に国内生産者の情報収集に活用しています。お菓子は地域の風土や文化が色濃く表れるため、小規模でも美味しいお菓子を作っている生産者は日本全国にいらっしゃいます。しかし、地理的な制約もあってなかなか出会いの機会がありません。それが当社の課題でもありましたが、GFPに登録したことで今まで関わりを持てていなかった生産者の方とつながれるようになりました。
特にオンライン商談会は所在地に関係なく、気軽に情報交換できるので重宝しています。GFPを介したマッチングは、時間に余裕がある点が良いですね。会社の紹介などを済ませて、もっとじっくり話を聞いてみたいと思ったときにきちんと話し合える。ファーストコンタクトとなるオンライン商談会で、お互いの事業内容を深く共有し合えていることが、次のステップに進むためのより良い協力関係の構築につながっています。

輸出先の情報を幅広く収集し、生産者の熱意をサポート

Q.国内生産者との商談では、相手のどのような点を重視していますか。

安藤貞敏さん

当社のアクティブな登録生産者数は数百に及びます。事業の規模や輸出先などはそれぞれ異なりますが、共通しているのは輸出にかける熱意。当社の「日本の“食文化”を世界にお届けする」という想いに共感してもらえることが、取り組む上で重要な要素になっています。
国境をまたいで別の国に出荷するというのは、日本国内で県から県へと輸送するのとはまったく別物です。国ごとの法規制があり、文化があり、好みがある。その障壁を一つひとつクリアしていくには、やはり生産者側の熱意に応えたいという気持ちがないと出来ません。商品の美味しさに自信を持っていることはもちろん大事ですが、その美味しさを海外の人に届けたいという想いがなければ、なかなか実現はしませんね。

オーストラリア商談
オーストラリアで行った商談の一場面。現地の主力代理店と大手流通が提示した条件を、どのようにクリアするか話し合った。

また、「どの国の、どんな店舗で、どんな人たちに買ってもらいたいか」というビジョンがはっきりしている生産者の方とは商談がスムーズに進みます。あらかじめターゲットが決まっていると方針を立てやすく、輸出先との商談も組みやすいです。もちろん、当社としてもノウハウの共有などを通じて、その点を明確化していくお手伝いをさせていただきます。

Q.食品の輸出で苦労されることを教えてください。

安藤貞敏さん

最も多いのは、賞味期限です。輸出において1〜2カ月は短く、賞味期限がある程度確保できることを最低限の条件としております。また、お菓子や飲料は口に入れるものですから、国・地域によっては文化的に受け入れられないものもあります。該当する場合、生産者の方にはなるべく最初のうちに難しいですよとお伝えしています。

Q.食文化やトレンドなど輸出先の情報はどのように収集されているのでしょうか。

安藤貞敏さん

それぞれの国に輸入代理店があるため、当該国で好まれる商品傾向やトレンドなどは代理店を通じて収集しています。また、主要国は営業マーケティング担当が直接現地に赴いて、市場動向や現地での嗜好などを定期的に調査しています。今のところ、当社で取り扱う商品はアジア系のお客さまがメインターゲットになっておりますので、カナダやオーストラリアでもアジア系の移民の方が多い地域での販売がけん引しています。

また、当社は創業時から卸売がメインですが、新しい取り組みとして海外消費者向けの小売も始めました。2024年3月に立ち上げた「NIPPON Journey」というECサイトです。お客さまからの生の声を頂けるのが小売のメリット。事業者経由で入ってくる情報よりもビビッドな意見が多いので、今後の卸売事業にも役立てられそうです。

栄光堂商事が運営するECサイト「NIPPON Journey」
栄光堂商事が運営するECサイト「NIPPON Journey」。バーチャル空港から47都道府県を訪れることで、あたかもそのエリアに旅行しているような感覚で購入体験が楽しめる。

輸出は攻めの姿勢が大切。今後は日用品への参入も視野に

Q.今後の輸出事業における目標を教えてください。

安藤貞敏さん

お菓子の輸出というカテゴリーにおいては、すでに当社は一定のポジションを確保できていると思います。しかし、お菓子というのは食文化を反映するもの。アジアの市場で広く受け入れられているものが、欧米やアフリカでも同様に通用するとは限りません。そのため、今後、事業を拡大していく上では、日用品などの幅広い品ぞろえを持ちたいと考えています。
また、お菓子に関しても今のポジションを守ることに専念するのではなく、もっと攻めの姿勢で輸出に取り組んでいくつもりです。

Q.目標達成に向けて、GFPに期待されていることはありますか。

安藤貞敏さん

インドやアフリカなどの将来的なポテンシャルが大きい市場とも接点が持てるとうれしいですね。香港や台湾といった日本との輸出入が盛んな国は、当社としても現地の代理店を通じて、好まれる商品の傾向やトレンドをつかめています。そういったすでにノウハウが確立された市場だけではなく、新しい市場への糸口となるような機会をいただけると助かります。

Q.これからGFPを活用したいと考えている事業者・生産者の方にメッセージをお願いします。

安藤貞敏さん

定期的にメルマガなどをチェックして、情報をアップデートすることが重要です。疑問・質問があれば、素早く専門家にコンタクトを取れるのもGFPのメリット。自分からビジネスを前に進めていく姿勢が大切です。
がんばれニッポン!